序章

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序章

 夢をみていた。  とても恐ろしい夢、を。  最初、目玉を抉られた。  そのあと虫のように手足を引き千切られていく。  淡々と、たんたんと。まるでそれが生活の一部であるかのように。自分が実験動物かなにかになった心地であった。  ……その(おぞ)ましさよ!  地獄の底から響くように、太鼓の音が延々と反響していた。ロウソクの匂い、麝香(じゃこう)に似た甘い香に混じって祝詞(のりと)を聴いた。  ──そ・やふ・ら・なあ・ずうえんび  ──そ・やふ・ら・なあ・ずうえんび  意味は分からなかった。けれど、なぜかそれか誰かを呼び寄せる言葉なのだと分かった。  しばらくしてズルズル、ヒタヒタ、とした足音らしきものが耳に届いた。すぐ側まで来て、やって来たものが動く空気を感じた後、急に視力を取り戻した。  手も足も無く、ぽっかりと空いたふたつの穴から血の泪を流していたのは……──!
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