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違和感
ここは何かがおかしい。
村人……「そまびと」と彼らは自分たちを呼んでいたが、みな、同じような顔をしていた。
親戚か何かなのだろうか。聞きたかったが、やはり絡み付くような視線とつっけんどんな言葉に、過去図々しいと言われた俺でも聞けなかった。
暗鬱とした家の中はまるで死体置き場のように不気味だった。なんの匂いなのか、魚の死骸を積み上げたような今まで嗅いだ事のない生臭い香りがそこかしこから漂っていた。
出された食事は海の幸が豊富で旨くはあったが、お通夜のようにただ集まって黙々と食べるという一種異様な有様であった。
案内され床に就いたのはいいが、結局俺は久美子を捜しに行くこともできなければ、寝ることもしなかった。
一晩中しゅうしゅうした音と、ドロリと纏わり付くような視線をずっと感じていたせいで。
ひたひたと忍び寄るように這い寄る悪意に似たナニカ。
誰かが俺に寝るなとずっと警告してくれているようだった。
それが自分の内側から出た保身なのか、外側から受けた助言なのか、俺には判らなかったが──
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