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「うん」
「あの日、原田さんに何が起こったのか、あと、あの人は、どうしてあんなことをしたのか」
「まずは原田さんのことから話そうか。ゆりちゃんは、どう考えてる?」
「…LSを辞めるために、愛梨…小田さんに」
「気にせず、話しやすい呼び方でいいよ」
「はい。愛梨に会って話をしたけど決裂して、腹を立てた愛梨に殺された…でも、その後のことは知らないみたいだったので……石森が保養所に運んで、管理人の小林さんに埋めさせたんじゃないかと。あ、そういえば小林さんって」
「ああ…うん。見つかった遺体のひとりがその小林さんだった。町内会長さんが確認したって。警察が保養所を捜索したときは、新しい管理人だという中年女性しかいなかったって聞いた」
「そんな……もしかして、殺されたんでしょうか。私が気づいたから」
「その辺はまだはっきりしてないんだと思う」
「あ、ごめんなさい。話がズレてしまって」
「ううん。気になったことは何でも話して大丈夫だから。ゆりちゃんの考えでほとんど合ってるけど、ひとつだけ違うことがあるの」
最初、石森は殺人や遺体遺棄への関与を否定し、愛梨と管理人の小林が勝手にやったことで自分は知らなかったと供述していた。しかし、原田さんの遺体を調べたところ爪の間から人の皮膚片が見つかり、石森とDNAが一致した。
「え…それじゃあ…」
「うん。愛梨が原田さんを刺したことは間違いない。そのとき意識は失ったけど死んではいなかったんだと思う。でも、愛梨や石森は死んだと思い処理することにした。で、石森が保養所に運んで埋めようとしたところ、意識を取り戻した原田さんが抵抗して、石森の手を引っ掻いた…」
「じゃあ、殺したのは石森ですか?」
「そう。本人も、最後には認めたわ。手を掴まれて、まだ生きていることがわかったから、念のため用意していたナイフで刺したって。解剖所見では、消化器官に達する深い刺し傷が致命傷とある。ゆりちゃん、小林さんと話していて腐敗臭が混ざった血のニオイがしたって言ってたよね?」
「…は、はい」
「消化器官が傷つくと器官内の細胞が血管に流れて、腐敗臭がすることがあるって聞く。その場に小林さんもいたんでしょう。だから、愛梨からはそんなニオイしなかったのに、小林さんからはした」
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