立ち向かいますか?

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「……はい。あの…」 「原田さんのこと、だよね?」  目をつぶって頷く。凉子さんは極めて事務的に話し始めた。  石廊崎の、あの保養所の敷地内から原田さんや美悠など5人の遺体が発見されたという。覚悟していたはずだけど、胸がえぐられたように痛む。もしかして…そう思っていた。愛梨が殺したと認めたのは興奮して嘘をついたとか、殺したと思っているだけで本当は助かっているとか、都合のいい仮説を描いた。でも、現実は寸分の余地を残さない。  顔を手で覆い何も発せずにいた。吐息ひとつでも漏らしたら、自分がどうなるのかわからない。ただ、ひたすら「間に合わなかった」が溢れる。  凉子さんの手が私の手をそっと包む。 「…森谷美悠さんと原田咲良さん、家族の元に帰れるからね」  優しいその呟きで決壊した。凉子さんの手を強く握りしめると、涙が頬を伝い耳まで濡らす。そうだ帰れるんだという思いと、遺体という揺るぎない事実を突きつけられる家族の気持ち、どうにかできたんじゃないかという後悔で入り乱れた。  落ちついて息ができるようになる頃には、お互いの手が汗でびっしょり濡れていた。私が力を抜くと、凉子さんの手も自然と離れる。 「お茶買ってくるね」  凉子さんが病室を出てから起き上がり、タオルで顔をふいた。赤く指の跡がついた手を眺めて深呼吸を繰り返すと、胸の奥のうねりが少しずつゆるやかになっていく。そして、ふと気になった。 「どっちがいい?」  緑茶とミルクティーのペットボトルを手にした凉子さんが戻ってきた。甘いものが恋しくなり、ミルクティーを選ぶ。 「………聞いても、いいですか?」  ひと口飲んで痺れるような甘さを味わってから、切り出す。 「うん、何?」 「保養所、捜索できたんですか? あの動画があるとしても、早いなあって」 「ううん、令状取って捜索したわけじゃない。あの日、犬連れで旅行してる人が早朝に散歩してたのよ。いつもと違う場所だからなのか、犬が興奮して走り出しちゃって、保養所があるあの山で見失ったんだって。飼い主が探しに行ったら地面を掘ってるところを見つけて連れて帰ろうとしたんだけど、掘るのをやめなかったらしい。で、何かあるのかと思って見たら、遺体が出てきたってわけ」
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