神様の瞳色

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「……って前の晩に説明されたら、どう思う?」 「それ本当?」思わず椅子から腰を浮かした。 「例えばの話だよ」神様が何食わぬ顔で答える。 「ね、嫌でしょ? 全部が全部、自分の知ってる範囲内での出来事となると、それはそれでつまらないと思うよ」 「それは、そうかもしれないけど……」 私は少し考えてから、でも、と顔を上げた。 「つまらないとか、面白いとか、そういうのとはまた別問題だよ。受験問題は、努力して知識を備えた人ほど安定して答えを導き出せるような、公平なものじゃないと割にあわないでしょ」 私の反論に、神様は困ったように黙り込んだ。次にはどんな切り返しが飛んでくるかと構えていると、神様は脱力して両手をベッドの上に放り出した。流れるような動きでボスンと仰向けに倒れる。途端に神様の顔が見えなくなった。 「あのさ」 神様が言う。なに、と答える前に、神様は上体を起こした。そうしてシーツの上で両手を組み合わせると、極まり悪そうに視線を落とした。 「正直、受験問題の国語は専門じゃないんだ」 「え?」 嘘でしょ、今さら?  「でも、さっき国語が好きって言った」 意図せず声が尖る。私は座ったままで神様に詰め寄った。 「あれ、嘘なの?」 責めるような問いかけに、しかし神様はとんでもない、という風に両手を大きく振った。 「嘘じゃない。国語は何も、問題形式で学ぶものだけじゃないんだ。私が本当に好きなのは、その参考書には載ってない国語だってこと」 「どういうこと?」 私が尋ねると、神様は「例えば」と言って顔の前に人差し指を立てた。
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