彼の生きていた証

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その当日になった。 前日には、洋服を決めるのに2時間もかかった。 楽しみと緊張で、なかなか寝付くことが出来なかった。 待ち合わせ場所は、2人が知っている 大きな公園の時計の下だった。 私は楽しみすぎて早く来すぎたみたい。 彼はまだそこに居なかった。 「あー、早く来すぎてしまったな・・・」 待ち合わせの時間になった。 彼はちょうどピッタリの時間に現れた。 「ごめん、お待たせ。待った?」 「ううん、私が早く来すぎてしまったの」 「僕も、もうちょっと早く来れば良かったなー。 すっごく今日楽しみでなかなか眠れなかった」 「私もよ。」 そういう会話をしながら、私達は水族館へ向かった。 「花純、見て!凄くデカい魚がいる!」 「本当だ、凄く大きいね!」 「亀がいる!おっきい!」 「亀、可愛いね」 「ねえ、イルカショー始まるんだって!行こ!」 その時、彼は私の手を繋いで引っ張った。 そうやってはしゃぐ彼の横に居られるだけで 幸せだと思った。 凄く楽しいと思った。 こんなこと今まで思ったことなかった。 「水族館久しぶりだなー」 彼が言った。 「なんかいいよねー」 「また、来たい!」 「また来よう!」 日が暮れ、今日が終わっていく。 彼は私の家の前まで送ってくれた。 「あっという間だったね」 「本当にあっという間だった」 「楽しかったな」 「僕もだよ」 「・・・じゃあ、ありがとうね」 私は彼に背を向けて家へ帰ろうとした。 「まって!僕から伝えたいことがある」 彼は緊張した様子だった。 「どうしたの?」 「僕は花純のことが好きです。 僕と付き合ってくれませんか?」 私はその時、時間が止まったように感じた。 「はい・・・」 驚きのあまり口があまり動かず、小さく震えたような声が出た。 「すっごく緊張した。良かった・・・ じゃあ、また、会社で!」 そう言って彼は恥ずかしそうに帰っていった。 告白されるなんて夢のようだった。 彼女になったんだ・・・ 私はとても幸せな気分になった。 その日私は、その幸せと共に深い眠りについた。
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