彼の生きていた証

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私達は会社の誰にも、 恋人になったことを明かさないようにした。 恋人であるという雰囲気が出ないようにした。 彼がモテていたということもあって もし、分かってしまったら、女の子たちから 花純が恨まれるかもしれないと 彼が言ったからだった。 「絶対会社には、内緒にしよ。僕達のこと」 「うん、分かった」 私たちだけの秘密。 そう考えると、私は嬉しかった。 私の初めてのキスは、彼の家だった。 不意に沈黙が流れ、目と目が合った。 その時、彼が顔を近づけてきた。 私は初めてのことでよく分からなかった。 でも、幸せであることに違いなかった。 この幸せな日々がずっと続いて欲しい。 そう願っていた。 ある日ふと、私は、彼に私の秘密を話そうと思った。 「私ね、その人の目を見るだけで、1年以内だったら死ぬのが分かるの」 「え?どういうこと?・・・」 彼は、とても困惑しているようだった。 「信じてもらえないかもしれないけど、本当なの」 「花純がそんな嘘はつくはずない。 僕は花純を信じるよ」 「ありがとう。 こんなすんなり信じてくれたの初めて。 普通信じないもん・・・」 「まぁ、そうだよね・・・ 話してくれてありがとう」 すると、彼は下を向いた。 何かを考えている様子だった。 「じゃあ、僕のことも話そうかな。 まだ、花純に話してないこと」
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