彼の生きていた証

13/25

1人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
彼がまた、話し始めた。 「2度目は、会社に入って花純と出会うまでの時期だった。僕は、いじめられたこともあって、 完璧になろうとした。 もっと、もっと強くならないといけないと思った。 誰かに頼られることはあったが、 僕は、頼れなかった。 心から信じることが出来なかった。 どうせ裏切るんだろうと 心のどこかで思っていたんだ。 僕は、それに疲れてしまった。 これからもずっとこうなのかと思うと、 自分に絶望した。 ずっとこのまま生きていく自信が無かった。 そういう時に花純に出会ったんだ。 花純と出会って、僕は何故か、 君に惹かれていって、自殺しよう、 なんて思わなくなったんだ。 ありがとう。 本当に、僕は、君に出会えて良かったと思ってる。」 私はいつの間にか泣いていた。 ぽろぽろと、涙が頬を伝っていく。 「泣くなって。 もう、絶対に自殺なんてしない。 花純を置いていかないから、大丈夫」 そう言って彼は、私をぎゅっと、優しく抱きしめてくれた。 私は、暖かい気持ちになった。 「陽向、色々話してくれてありがとう。 辛かったよね。私がずっと、そばにいるから。 もう大丈夫だよ」 そう彼に伝えると、 今度は彼が私を抱きしめたまま、 ぼろぼろ泣き出した。 私はずっと、ずっと彼が1人で抱えていたんだと思うと凄く辛かった。 今度は2人で泣きあった。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加