彼の生きていた証

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私は彼とたわいも無い話をしていた。 何故か私は嫌な予感がしていた。 ふと、私は彼と目があった。 その時、彼が1年以内に死ぬと分かった。 分かってしまった。 彼はまだ、27歳だというのに・・・ 「え、どうして・・・」 私は涙が溢れ出てきた。心の声が漏れていた。 「どうしたの?」 彼が聞く。私は泣きながら答えた。 「陽向、1年以内に死んじゃう・・・嫌だ。嫌だよ。 居なくならないでよ・・・」 「嘘、だろ・・・」 彼は目を見開いた。 「私は分かるだけなの。 何も出来ないの。 救えないの・・・」 「本当は信じたくないよ。 でも、花純がそんな嘘をつくわけないし・・・ いつぐらいか分かる?」 「うん・・・8ヶ月後。」 「そっか・・・ 僕はもう、あまり長く生きられないのか・・・ 分かった・・・ でも、僕は今までどうり、 花純のそばに居るから大丈夫! 今まで以上に君を幸せにする!」 彼は、少し強がっているように思えた。 私を不安にさせない為に・・・ 「私は、ずっと、一緒にいるから! ずっと、ずっと陽向のそばにいるから!・・・」 それが、私が答えられる精一杯の言葉だった。 「・・・あ、そうだ! これから、もっといっぱい出かけて、 2人でいっぱい写真撮ろうよ!」 そう陽向が言った。 「うん・・・沢山撮ろうね!」 それから私達は、とにかく沢山 色んなところに出かけた。 海、山、遊園地や水族館、 夜景の綺麗な場所、温泉・・・ 今まで以上に陽向との思い出をつくった。 それをいっぱい写真にとって、 私たちは思い出に残していく。 陽向は私ばかりを撮っていた。 ちょっと恥ずかしかったが、嬉しかった。 彼の携帯の中に私が残っていく。 陽向はこの瞬間を形にしたかったんだと思う。 2人で一緒に居られる時間を・・・
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