彼の生きていた証

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私には秘密がある。 それは相手の目を見ただけで、1年以内であれば その人が死ぬことが分かってしまう。 それは今日かもしれない、半年後かもしれない。 1年以内であればいつぐらいに死ぬのか、 はっきり分かった。 私は人の生と死を感じながら生きてきた。 小さい頃はまだ、はっきりと分からなかった。 人が死ぬということ。 そして1年以内であるということも。 私が中学生になった頃、おばあちゃんが死んだ。 1年前くらいに、おばあちゃんもうすぐ死ぬかもしれない、と思った。 それを私は、母に言った。 「お母さん。おばあちゃん、1年以内に 死んじゃうかもしれない」 しかし、母はそれを信じなかった。 「何言ってるのよ。 おばあちゃん、あんなに元気でしょ」 「そうだけど・・・」 私は不安になった。 父に話しても信じてくれなかった。 流石におばあちゃんに言う訳にもいかないし・・・ 私は時間が経つにつれて、それがはっきりと強いものになった。
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