彼の生きていた証

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ある日、上司から彼と一緒に仕事をするよう頼まれた。 仕事をする前に、彼に聞かれた。 「名前なんていうんですか?」 彼とは部署が違うため、話す機会が今まで無かった。 私は彼を見ていただけだった。 「佐藤花純(かすみ)です」 「かすみか。かわいらしい名前ですね。 僕の名前は・・・」 「言わなくても分かりますよ。 五十嵐陽向さんですよね」 「なんで分かったんですか?」 「会社で有名ですよ」 「うわー、そうだったんですね・・・」 彼はそう言って苦笑いをした。 「あれ、五十嵐さんは何歳なんですか? 女性に歳を聞くのは失礼かもしれませんが・・・」 「25です」 「え、僕と同じ歳だ。落ち着いているから、てっきり年上の方かと思いました。 ・・・あ、じゃあ、タメ口でもいいよね」 そうやって彼は、はにかんで笑った。 笑顔がとても素敵だった。 不思議と、私はもっとこの人と関わりたい。 もっと話がしたいと思った。
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