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ぼくが大学から帰宅すると母の知り合いのおばさんが来ていた
ただいま
あっ、こんにちは
いつも母がお世話になっています
あ〜ら、こんにちは
お邪魔してます
エライわね、ちゃんと挨拶できて、最近の子は黙って通って行っちゃう子も多いのに
は〜、ではごゆっく、り・・・
やだわ〜
この子ったら、誕生日の話したっけ?
あら、聞いてないわ
じゃ、聞いてよ〜
と、母がまたあの話をハンを押したように話し始める
また始まった!
退散したいがおばさんの好奇の目がそうはさせてくれない
実はね
この子、平成8年8月8日8時8分・・・
すごいじゃない!
縁起がいいわね!
待って、まだ続きがあるのよ
平成8年8月8日8時8分なら良かったものを8時13分に生まれてきたの!
あと5分早く生まれたらカッコ良かったのにね〜
あっそうだったかしらね
でも元気に生まれたんだから良かったじゃない!
するとおばさんが思いがけない話をし始めた
あなたがお腹の中にできたばかりの頃、まだ妊娠がわからなくて、胃の調子がよくないからって、レントゲンを撮っちゃったのよ
それから妊娠がわかってね、お医者さんから障害が出るかも知れないから堕した方がいいと言われたって泣いて私に電話してきたのよ
でも考えても考えても堕すという選択肢はないと言ってどんな子が生まれたとしても私は産んで育てる!と私に言ったの
そして無事に生まれたあのとき、あなた嬉しくて号泣してたじゃないの!
えっ?そうだったんですか
ぼくはその話は知らないんです
あら、そうだったの?
あなたのお母さんは強い人よ
大切にしてあげてね
おばさんはひとしきり話したら帰って行った
それから母はそのことをぼくに話すわけでもなく笑って何だかごまかされてしまった
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