真夏の夜の夢

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 「オレの従弟?」  夏休み明け、学校が始まってすぐ加藤君にあの時の彼のことを聞くと怪訝な顔をされた。  「あのさ、ハナってどんな顔でもOKだっけ?」    と、スマホを操作して見せてくれたのはあの日の集合写真。  何見てるの~?と周りに皆集まってきて。  「ハナがオレの従弟の連絡先教えろって」    「ちょ、言わないでよ」  「え?ハナ、好み変わった?」  美帆がそう笑うけど、いやいやいや、何を言っているのか?!  私がかっこいい人好きなの、あんたが一番知ってるじゃんね。  「ホラよ、マジでコイツでいい?まあ、めっちゃ喜ぶとは思うよ、モテないから」    とズームして加藤君が見せてくれたのは。  「…誰よ?」  …申し訳ないけれど加藤君にそっくりじゃないか、そうか、君もモテない君だもんな。  じゃあ、あれは誰かの知り合いとか、他の学校の子?あれ?  加藤君のその集合写真を操作して元の小さな画像にしてからあの青いシャツを探して、そう、この人!!  右端に立つ笑顔がやっぱりイケメンの彼をズームして。  「この人!!ほら、見て、かっこいい!!」  ね、とスマホを手にした私に皆が黙り込む。  「何?」  何で皆黙ってんの?! 何とか言いなよ、と見回したら。  「ハナ…そんな人、いなかったと思う」  美帆のその呟きにもう一度スマホを覗き込んだら。  彼が透き通っていくように写真から消えて、そして。  「だから、軽々しく肝試しなんてすんなよ!!!!」    窓ガラスがガタガタと揺れて。  教室中に絶叫のように響き渡ったその声に。  弾かれるように全員蜘蛛の子を散らすように教室から悲鳴をあげて走って逃げてく、けど。  ……逃げ遅れた私は……。  「大丈夫?」  聞き覚えのあるその声に振り向くことができない。 【完】
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