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生首のような白い物体が浮遊しているように見えた。
表情まではよくわからないそれが、私たちを見下ろしていた、私だけじゃなく皆見えてたんだ。
残念ながら私はめちゃくちゃ鈍くさくて、足が遅い。
そのせいであっという間に逃げていく皆に先を越されてついていくのがやっとだった。
恐怖で誰もが自分のことで精一杯。
背中に広がる闇から早く逃げ出そうとキャンプ場の灯りを目指して必死に走った。
なのに。
もつれたのか、いや石なのか、躓いてバランスを崩した瞬間。
私の体は大きく浮かんですぐに痛みと共にアスファルトに打ち付けられた。
「待ってよ、待ってってば!!」
叫んでも私の前を走ってた子にももう届かない、声も足音も段々と遠ざかっていき。
遥か遠くで皆の悲鳴が聞こえてる。
「助けてってばあああ!!!」
私の悲鳴だけが木霊した。
「待ってって、言ってるのに」
膝から血が出てそうなくらい痛い、起き上がるのも辛い。
シーンと世界でたった一人にでもなってしまったかのような月の灯りしかないこの暗闇の中で。
何もかも嫌になってうつ伏せのまま泣きじゃくる。
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