真夏の夜の夢

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 しゃくり上げながらどれくらい泣いただろう。  誰かの足音と。  「おーい」  と、呼びかけてくるような男の子の声に顔だけあげると。  前方から近づいてくる人がいるのが月明かりに浮かぶ。  私の近くまでやってきたその人が。  「大丈夫?痛くない?立てる?」  月明かりに照らされた彼の顔には見覚えがなかった、なかったけど、確かこの青いシャツ。  「加藤くんの従弟?」  しゃくり上げながら尋ねるとニコリと笑った顔にホッとすると同時に。  ドクンと胸が高鳴った。  ……東京人だっけか、かっこいい……。  こんな切羽詰まった状況でよくそんな思考回路が浮かんできたもんだ、と私も呆れたけれど。  この辺りにはいないような爽やかなかっこよさに涙も止まった。    「立てる?」  差し伸べられた指先まで美しく月明かりに照らされて。  涙なのか鼻水なのかをたくさん拭った私の手を触れてはいけない気がして首を振って一人で立ち上がった。
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