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十時を過ぎても、まだ電気もパソコンもついている。
これはお説教しなければ、と私は娘の部屋のドアを開いた。
「ちょっと海花!十時に寝るって約束、守る気がないの!?」
私が眉を跳ね上げると、彼女はゆっくりと振り返る。
少しだけ不思議に思った。娘が見ているパソコンには、真っ黒になったヨウチューベの画面があるばかり。何も映っている様子がない。一体彼女は、何をそこまで夢中になって見ていたのだろう?
「お母さん」
やがて海花は、熱に浮かされたような眼で告げたのだ。
「家に赤いクレヨンと墨汁、ないかな?」
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