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__たった、五分。
__されど、五分。
その五分後に、何が起こるかは誰にもわからない。
だから私は、ただ波のように押し寄せてくる感情に飲み込まれることなく波が引いていくのを待ってみることにした。
__その五分の繰り返しが、未来へと繋がる。
もしかしたら、現在よりも幸せな未来が待っているかもしれないから……。
「にゃー」
顔を上げたルナが「ごちそうさま」と、言っているのか私をそっと優しい瞳で見つめる。
「じゃあ、またね」
「にゃっ」
今度は短く答えると、ルナは窓から飛び降り何処かへと消えて行った。
気まぐれなルナのことだから次はいつ会えるかはわからないけれど、その時の為にまたささみ肉とたまにはマグロでも買ってやろう。
「さー。また、始めるかー」
私は窓を閉めてリビングの椅子に腰を下ろすと、また勉強を始める。
外ではどこへ向かおうとしているのか、トテトテと歩くルナを満月の光が照らしていた。
その瞬間、揺れるルナの尻尾が二又に分かれていたことは当然誰も知ることはないのだった。
おわり。
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