魔法の言葉

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             *** 「和美。まだ、勉強するの?」 「うん。もう少しだけ」 「そう。あまり、無理しないようにね」 「ありがとう」 「じゃあ、お先に。おやすみなさい」  と、微笑むと母は夜食に作ってくれたツナおにぎりが二個乗ったお皿をテーブルの上に置き、リビングから出て行った。  あれから、月日は流れ私は前の高校を辞め通信制の高校へと転入した。  勉強は大変だけれど、あの狭い世界にいたような息苦しさも対人関係に苦しめられることももうない。 「ふぅー」  立ち上がり、リビングの両開きの窓を開け思いっきり外の空気を吸いむ。  すると夜風には、いつの間にか夏の匂いが混じっていた。 「そろそろ、夏か……」  ……今年はお母さんと、夏祭りにでもいこうかな。  なんて、子供のように微かに心を踊らせている自分がいることに幸せを感じていると、隣から声を掛けられた。 「にゃー!」  振り向くと隣の家の塀からこちらに渡って来たのは、この地域に住む野良猫だった。
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