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「ルナ! 久しぶり!」
闇のような漆黒の毛に、この夜空で輝く満月のような金色の瞳から私は「ルナ」と、呼んでいるけれど彼女はこの地域の人気者だ。
恐らくたくさんの名前があるのだろうけれど、私が付けた名前をちゃんと覚えてくれている。
「ルナー。今度、試験があるんだけど難しくてさー」
と、いつものように今日の出来事を話しながら身体を撫でてやると嬉しそうに喉をグツグツと鳴らす。
小学生の頃にこの家に越して来てから、私にとってルナは大切な相談相手だ。
噂では百年も前からこの辺りに住み着いているなんて言われているけれど、もし本当ならばそんなのはただの化け猫だ。
恐らく似たような黒猫を勘違いして、そんな噂が広まったのだろう。
「にゃー。にゃー」
と、突然鳴き出したルナが何を催促しているのかわかっている私は思わず苦笑する。
「はいはい。わかってますよ。あと、五分待ってね」
「にゃー」
すると、静かになるルナはどうやら人間の言葉がわかっているようだ。
__あと、五分待ってね。
それは、ルナが静かになる魔法の言葉。
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