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__終電まで、あと五分。
手元のスマホの時計を確認すると、私はそっと立ち上がる。
そしてホームの白線ギリギリの位置で立ち止まると、大きく深呼吸をした。
__キエロ。
__ウザイ。
電車の走り去る音と共に、鼓膜の奥で雑音のように繰り返される汚い言葉。
胸に刺さった棘に気づかないふりをして笑顔を振り撒くことにも、自分で一本一本棘を抜く作業にも疲れた。
__もう、全てから解放されたい。
両手を広げ、もう一度大きく息を吸い込もうと……。
「おい」
「ひゃっ!?」
その瞬間、突然腕を引かれ驚きのあまり変な声が出た。
……な、何!?
バクバクと波打つ心臓を押さえながらゆっくりと振り返ると、いつの間にか後ろには人が立っている。
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