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起: 事の起こりはアクシデントから
休日、もう少しで正午を迎える頃合い。
半袖の腕をじりじりと太陽が焼いていく音が聞こえてくるくらいには、今日の暑さは容赦ない。
こんな日は黙って家で作業をするのがイチバンだと思っていたのだが、現実はそこまで僕に甘くはなかった。
甘くないどころか、激辛と言ってもいいくらいだ。
なにせ、前日までは元気だったはずのエアコンが、今朝になって絶不調になってしまったからだ。
業者には連絡したものの今日日すぐさま来てくれるはずもなく、最速でもあと二日はかかるという。
不幸中の幸いかエアコン無き間に熱帯夜とはならずに済むらしいが、日中はどうにもならない。
心頭滅却ができないのだからどうしようもないわけだ。
いつもはなかなか上がってこない重い腰も、背に腹は代えられぬとばかりに動いてくれる。
しかもイイ感じに腹も背中には代えられぬとばかりに減ってきた頃合い。
せっかくならばとノートパソコンと財布をカバンに突っ込んで、やってきたのはサイゼリヤだった。
「いらっしゃいませー」
元気な声とともに、冷房の気持ちの良い風が僕を迎えてくれる。
「……ココは天国ですか。あなたは天使ですか」
「あ、あはは……。一名様ですか?」
「はい」
苦笑いで返されて、ようやく脳細胞が茹だっていることに気付く。
無反応よりはマシだと自分に言い聞かせて、店員さんに促されるまま空いている席に座った。
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