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一ヶ月後。
松葉杖のとれた俺は茉由利のいる集中治療室へ向かっていた。手術は成功した。これからどのくらい生きられるかは未知数だ。それは他の人間だって同じこと。
「手術後は浮腫むらしいから、お見舞いに来ないで。どうせ入れないし」
そう言われてはいたが、窓越しに茉由利を見るためリハビリの前に茉由利の集中治療室に行くのが日課になっていた。
手術当日、茉由利は目を覚ますのが遅くて、俺は不安になった。でも、今は勝気な目が俺を見返してくる。
紘子さんが言うには、茉由利も数日後には一般病棟に戻ってリハビリが始まるという。
「智治がきついリハビリをなんでそこまで一生懸命するのか分からなかったけれど、まさか自分もそうなるなんてね。今は智治の気持ち分かる。私、自分のためにも、智治のためにも頑張るから」
手術前に茉由利がそう言ったのを思い出して俺は口元を綻ばせた。
集中治療室の茉由利が早くリハビリに行けと言っている。
俺が手を振ると茉由利も小さく振り返した。
茉由利と俺の人生はこれからだ。
了
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