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俺はその後どうやって自分の病室に戻ったのか、記憶があいまいだ。
気が付いたときには自分のベッドの上に力なく腰かけていた。
相楽さんは手術をしなければそう長くは生きられない。
奇妙な感じだ。確かに顔色はよくないし、すぐ息は上がる。でも、相楽さんは生きてる。
なのに、長生きしたくない?
俺には全く理解できなかった。少しでも長生きして、やれるだけのことをやってから死ぬなら死にたい。まだこの年で死ぬなんて考えられない。
手術をすれば今よりかは長生きできるはずなのに、それを拒むなんて正気の沙汰じゃない。
――せっかく出会えたのに。
悔しい。あんなに心配している親がいるのに。好きだって言った俺だっているのに。相楽さんにとってはどうでもいいことなのか?
花火に誘われてふわっと膨らんだ心が一気にしぼんだ。逆に、花火を見るときに何を話せばいいのか、自分に相良さんを説得ができるのか、不安になった。
昼ご飯も夜ご飯も食べたのだろうけど、思い出せないような状態で19時、相楽さんの病室へ向かった。
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