2丁目豆屋のハムタロー

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ハムタローは白くて丸いネズミに似ている。 大福のようなフォルムをした白い体に、こぼれ落ちそうなつぶらな黒い瞳。背中には豆大福の求肥を透かして見える中身の豆の如く、淡い黒の縞が走る。 ネズミに似ているというか、見た目は完全にハムスターそのもの。 更に詳しく述べるならば、ジャンガリアンハムスターのパールホワイト。 かつてハムスターだったハムタローだが、今はそうではない。 『豆清大黒天の御神使・公太朗鼠』 これがハムタローの現在の身分であり、真名である。 かつては4丁目の吉田さんちの次男(小学校3年生)が飼育していたハムスターだったが、2年目の越冬に失敗して死亡。帰幽できずに魂魄だけになってさ迷っていたところを、同じ町内の豆菓子屋『豆清(まめせい)』店舗に祀られている大黒天が拾い上げて神使とした。 ”これからはおまえを公太朗(コウタロウ)と呼ぼう。よく仕えてお呉れよ” なんと立派な名前を与えて下さることか、この神に誠心誠意お仕えしようとハムタローは喜びに打ち震えた。
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