このまま、ここに

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 校内球技大会の午後終盤。  わが赤団は現在総合二位。  一位との得点差はわずか。  このバスケの試合に勝てば逆転可能。  ……となれば決勝戦を見ている者たち、赤団の声援もヒートアップしてくる。 「ほらみんな。声を合わせて応援しよう」  赤団団長の森岡先輩が拳を振り上げる。  各応援団団長用として代々受け継がれてきた四枚の学ラン。昭和の臭い漂う年代物。  コートくらい長く、だぶっとしたサイズでカラスのような真っ黒詰め襟学生服。  体育祭、球技大会間近になると生徒会室前のウィンドウに飾られる、かっこ悪さ全開満載の団長服。  赤団団長になった森岡先輩がこれを着る?  着用に反対するみんなに混ざり、わたしも団長服の撤廃を隅っこから生徒会に求めた。  だけど森岡先輩が着ると一変した。  あのダサい学生服が、どうしてこんなにも素晴らしい衣装に様変わりするのだろう。  ハチマキか?  あの長いハチマキのせいか?  赤、白、青、黄色。  学年を縦割りに組み合わせ混ぜた応援団。  一年生、二年生、三年生。  入り乱れて黄色い声を立てている。  先輩の赤く長いハチマキが風になびく。  ハチマキに吸い寄せられるように。  わたしはそっと森岡先輩に近づいた。
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