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第二章:一年後の桜
あれからもうすぐ一年か。
ベッドの上でストレッチしながら、レースカーテン越しに見える水色の空に息を吐く。
山下櫻子とはその後、廊下や学校の駐輪場で顔を合わせても、向こうが目を合わせずに挨拶を寄越してこちらも素っ気なく返すような間柄だ。
そもそもクラスも違うのでそんな調子でも学校生活の表面上はさして問題はなかった。
どたりとベッドに倒れ込んで一人ごちる。
「今年は同じクラスなんだよな」
コロナウィルスの影響で三月から休校のまま、新学年のクラス名簿が学校のメールシステムで回ってきた。
二年二組のクラス名簿で“森谷翔”のすぐ下に“山下櫻子”の四文字を見出した瞬間の、胸のドキリと痛いほど高鳴る感じが蘇る。
「やだな」
向こうはそう感じているだろう。そう思うと、胸の奥がまた疼いて見えない血が流れ出す気がした。
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