ショートフィルム

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 時間貯蓄のサービスができたのは5年前。八木(やぎ)は33歳からこつこつと、昼休みを削ったり、夜テレビを観る時間を削ったりして、1日あたり20分を積み立て、年間約7,300分を貯蓄してきた。  そうして38歳の今、5年間で36,500分。時間にして約608時間。つまり、25日ちょっとの時間貯蓄があることになる。  たまった時間は1日上限180分までおろすことができるが、八木は今まで一度も貯蓄した時間に手を付けたことはない。  貧乏性なのだろうか。どんなに忙しい毎日でも、いつかもっと大切なときのためにととっておくつもりだ。  この年になって、毎日目まぐるしく、とにかく忙しい。若い頃はあんなに時間があったのに、大人になると時間に追われて息をつく暇もない。   現在の制度下では20歳からしか積み立てできないが、本来、無駄な時間は高校時代とかもっと前にある。できれば、あの頃から貯蓄していたらよかった。
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