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桜の咲く季《とき》
「横浜はもう桜散っちゃったのに、こっちは満開なんだね」
七歳の桃花ちゃんは白ともピンクともつかない淡い色彩の花霞を見上げて不思議そうに呟いた。
白桃じみたふっくりした頬にいつも笑っているようなやや垂れ気味の目、柔らかそうな栗色の髪をお下げにして飴玉じみた撫子色の玉飾りの着いたゴムで結わえ、見上げる桜の花よりもう一段階濃くはっきりした正に「桃色」のワンピースを纏っている。
あの頃から「女の子」というとこの三つ上の従姉をまず思い浮かべたものだった。
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