9話 錬金術エリーの店

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9話 錬金術エリーの店

交易都市クーヨン 外周城壁と内周城壁、2つの城壁に囲まれた都市だ。 外壁城壁と内周城壁の間には、俺が教育を受けた丘の上の奴隷商人の屋敷や、作物を育てる畑が広がっているらしい。 内周城壁の中は、住宅街と商店街が区分けされていて、エリーの後ろに付き従うように、商店街の一角を歩いていた。 交易都市と言うだけあって、商店街の道幅は広く、正午に近い時間だからだろうか、人に溢れていた。 「…ここよ」 商店街のメインストリートから、少し横に入った所にそれはあった。 錬金術師エリーの店 そのまんまの看板が、掲げられている。 わかりやすいと言えば、わかりやすいのだが… 扉を開くと中は10畳程の広さ、木の床、木の棚、まさに中世RPGの店という作りだ。 奥の商品棚には、ガラスのような透明な筒状の容器に、赤色の液体と青色の液体が詰められ、並べられている。 「これはガラス?いや、感触が違うか」 透明感はガラスだが、手に取った感触が竹のようだった。 「…ガラスを知っているのに、透明竹を知らないなんて、貴族様かしら?」 「いえ、その…」 彼女の話によると、ガラスは量産が難しい為、貴族の嗜好品であり、透明竹というのはガラスのように透明な竹らしい。 加工され庶民の容器から、窓など多様に使われており、農村の貴重な収入源であると。 「この赤色の液体は、なんでしょうか?」 「ポーションよ」 「ポーションというと傷を治す?」 「そうね…青いのはマジックポーション」 どんな味がするのだろうと、興味深く見ていると、 「…奥は物置…好きに使う…」 カウンターの後ろ、商品棚の横の扉を指す。 好きに使って良いという事は、ここが俺の部屋なのだろう。 扉を開けてみる。 6畳程のこじんまりとした部屋だ。 物置と言った割には、物が置かれていない。 よく見るとあまり使っていないのか、ホコリが溜まっている。 当然、寝具などもないわけで、 「床で雑魚寝でしょうか?」 奴隷の扱いらしいとは思うが、一応確認してみる。 「ベッドは買う…」 そう言うと、これ以上会話をする気がないのか、彼女は2階へと上がってしまった。 「…仕事の時間よ」 という言葉を残して… ちょっと待って! 貨幣価値が、全然わからないんですけど⁉︎
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