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11話 看板娘
生物はあらゆる環境で、生き残るようにできている。
順応性とは偉大だな、と実感している。
「ありがとうございましたー!」
笑顔でお客様を見送る私。
ご主人様の趣味で、ゴシック調のメイド服を着た看板娘アリスちゃんだ。
店番を任されて一ヶ月、大通りから外れたこの店は、比較的新しい出店な事もあり、今は一日3人程の来店であった。
ご主人様によると私が店番をするまでは、来店は一日0人か1人であったというから、大きな進歩だ。
もっとも、商品単価が一人で2ヶ月は外食できるという銀貨2枚であるから、利益率はとても高い。
一度、ご主人様にポーションの作り方を見学させてもらったが、原料は以下のとおり
専門店で仕入れた、
薬草1束 銅貨10枚
小さな魔石1つ 銅貨10枚
井戸水 私が汲んできてプライスレス
赤い実か青い実 銅貨1枚
これを大きな鍋の中に放り込んで、怪しげな作業をしたら、A級錬金術師エリーと刻まれた透明竹に流し込んで、ポーションが10個程完成していた。
まさに錬金術だ。
店番の仕事に慣れたら、怪しげな作業を教えてもらおうと心に誓っている。
ちなみに赤い実と、青い実は着色料のようだ。
ポーションもマジックポーションも無色透明な為、着色しないと、どちらかわからなくなると。
カララン♪
今日はあと何人来るのかなと考えていた所で、扉が開く音がする。
ちなみにこの鐘は、私が雑貨屋で購入して取り付けた。
ご主人様は不思議な顔をしてたが、来店を知らせるベルとして、とても有用なのだ。
決して、サボってる姿の不意打ち防止ではない。
「いらっしゃいませー!」
扉から入ってきたのは、鎧を着込んだ常連の騎士様であった。
「赤ポーションを3つ貰おうか」
茶色い髪に無精髭を生やした騎士様は、奥の棚を指差すと銀貨6枚を取り出した。
「ありがとうございますー」
防犯の関係上、カウンターの奥に並べてあるハイポーションを手に取り、騎士様へと渡す。
「仕事は慣れてきたか?」
…ん?
不意にかけられた声に、騎士様を見上げる。
私の身長は、おそらく140cm前後、騎士様は180cmくらいあるのだろうか。
「はい、店番は問題なくできそうです」
笑顔で答える。
「慣れてきたなら、休日は街を見てみると良い。ここは王都に近く治安も良いからな」
「騎士様達が、街の治安維持をしてるからです?」
「街の治安維持は兵士の仕事だな。俺達は街の外で、街道周りの魔物や盗賊を討伐している」
「命がけの仕事なのですね」
剣を振るえる事が、少し羨ましいなと思いつつ、社交辞令を述べる。
「生きていく為には、大抵は命がけさ。もっともこのポーションのおかげで、助かってはいるがな」
そう言うと、買ったばかりの赤ポーションを掲げた。
「A級錬金術師のポーションが、銀貨2枚で買えるなんてな」
そう意味深な言葉を呟いて。
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