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18話 第六感 魔力
「…力が欲しい?」
日課である昼下がりの目覚まし時計の仕事をこなしている時、ご主人様はどこかで聞いたセリフを呟いた。
どんな返答をして良いか、言葉につまっていると、
「…マリオンから…聞いた…」
「はい、生きる為の力は、必要だと実感しております」
無難な答えを返す。
「どんな力が欲しいのかしら?」
面白いものを見つけていた事を思い出したように、ご主人様は流暢に話す。
「…錬金術師の力でしょうか。あのようなポーションが作れるようになれば、食べるのに困りそうにありません」
暗に奴隷から独立したいと取られなくもない言葉をオブラートに包み、ご主人様の反応を伺う。
「…そう…」
ご主人様は興味を失ったようで、つまらなそうに呟いた。
どんな返答を、期待されていたのだろうか?
ただ、何かに気づいたようで、
「錬金術師は魔術師、魔導師の先にあるものだから、まずは魔力の操作から身につけなさい」
「魔力の操作…教えていただけるのでしょうか?」
私の言葉を聞き、ご主人様は凄く面白いものを見つけたという顔をしながら、右手を突き出し、手のひらを天井へと向けた。
そして、手のひらに光の球体が現れる。
元の世界には、なかった感覚。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感とは違う感覚が、それを違和感としてハッキリと捉えていた。
「見えるかしら?」
「光の球体が見えます」
合格とばかりにご主人様は笑うと、光の球体は青色に変色した。
「これは何色?」
「青ですが?」
見えた色をそのまま答えると、ご主人様は少し驚いた顔になる。
「これを飲みなさい」
そう言って棚から持ってきたのは、マジックポーションだった。
「飲んだら、身体に広がる何かを感じるはずよ。それが魔力」
そして、私は1本で銀貨2枚か…という雑念を払いながら、慎重に飲み込んだ。
喉から通り、触覚はそこで消えると、五感とは違う違和感が身体中を駆け巡る。
…これが、魔力…
…この違和感の流れを、手足を動かすように操作できれば…
ご主人様の前だというのに、俺は嫌な笑みを浮かべていた。
それを見て、ご主人様も笑みを浮かべた。
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