8月6日

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8月6日。 今日は僕が案内した。 彼女が知らなさそうで、彼女が気に入りそうな場所。 そんなことを考えながら一日の計画を練るのはとても楽しかった。 寝不足になるのもわかるな、と思ってしまった自分に苦笑して早めに寝た。 その日もやっぱり5分前に行くと、今度は彼女は10分遅れてきた。 また髪もボサボサで目の下にくまでも作ってくるのかと思いきや、いつになく髪にも服にも気合いが入っているような気がした。 どうしたのかと聞くと、変かと聞かれた。 似合っていると伝えると、ほっとしたように、ふわりと笑った。 僕はその表情を一生忘れない。 いつになく気合いの入った髪も、服も、目に入らなくなるくらいに綺麗だった。 最初は少しドキドキして、それと同時に少し寂しかったけれど、中身はいつもの彼女と何も変わっていなくて、少しだけ安心した。 慣れないメイクも髪も頑張ってみたのだとまたドヤ顔をする彼女が、ただただおかしかった。 けれど、遅れてしまったことを謝罪し、しょげる彼女は嫌いだった。 彼女にはずっと笑っていてほしい。 8月6日。 今日は僕が案内した。
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