第二章 大海原をゆく船 第五節 フレイング・デッチマン号 その8

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「カハッ!!」  声にならない声を上げたケルーベだったが、直後にニヤリと笑い─── 「待ってたぜィ、二人とも!」  ケルーベは左腰に隠してぶら下げていた手りゅう弾のピンを抜く─── 「グリンドー!! ケルガを頼んだぞ!!」  ケルーベの最後の叫びが妹ケルガに届いたのと同時に彼の体は吹き飛び、同時にスライム女『ネルゼス』『ホルア』の二人のスライムの体も散り散りとなった─── 『ズガ───ンッ!!』 「兄さんっ!!!」  ケルガが茫然として叫ぶ。  爆発の振動で渡り板は海に落ち、両船を繋いでいたロープもフックが外れて海に引き込まれていった。  幽霊船フレイング・デッチマン号は徐々に走砂艇ドマーロから離れ始め、小さな爆発とともにメラメラとした炎を船内から吹き出しつつ成大な黒煙を上げ始めた。 「ケルーベ兄・・・さん!!」  ブラーウ医師から甲板に降ろされたケルーベの妹ケルガが泣き崩れる───  そんなケルガをブルアン少年は胸の痛みとともに見つめていた。 「許してくれ・・・レッドン・・・また、あの世で会おうぜ・・・」  グリンドーがオレージナを支えながらつぶやき、オレージナも口だけの形で「レッドン・・・」 とつぶやく。  パプラ船長は目を潤ませながらフレイング・デッチマン号を見つめる。 「グリンドー・・・」  ふと、オレージナがグリンドーの顔を見上げて言う。 「アルネラという名前に・・・心当たりでも?」  グリンドーはオレージナの目を見つめて言う。 「偶然の一致か・・・それとも・・・その名前は・・・・・・」  グリンドーは息を吸い込んで答えた。 「オレの母親の名前と同じなんだヨ!」 第ニ章  「大海原をゆく船」 End ◇来週から、最終章「遥かなるブベール」を、別の本でスタートさせます!  ご期待ください!
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