第二章 大海原をゆく船 第二節 神獣島と咆哮岩礁 その1

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第二章 大海原をゆく船 第二節 神獣島と咆哮岩礁 その1

 謎多き島───神獣島(しんじゅうとう)汎西洋(はんせいよう)の真ん中のカラブ海に広がる危険な草原海洋の真ん中に位置する島である。  また、咆哮岩礁(ほうこうがんしょう)神獣島(しんじゅうとう)から西南西の方角に110kmほど進んだところにある巨大な岩礁であるが、その周囲は危険な流砂潮流に囲まれている。  どちらも好き好んで近づいたり上陸したりする島では無い───。  そのため、今までに上陸した者はほぼ皆無であり、島の正確な位置が測量されておらず、海図データもおおよその場所を示しているだけである。  なぜ観測衛星等による地形の測量ができないのか──────?  ここで一つ断っておかねばなるまい───放射性天然痘ウィルスRAVV2051は正歴2051年に全世界的に蔓延したウィルスだが、その起源は生物兵器ともいわれている。  そして、このウィルスは高い周波数、あるいは高出力の電磁波により活性化され、毒性を劇的に増加させる性質があり、さらにその遺伝子の中に持つ放射性蛋白質を複製することが分かっている。  したがって、この活性化したウィルスに感染すると、その毒性ばかりでなく、放射性物質による被ばくの被害にも会ってしまうのである。  さらにやっかいなことに、このウィルスは実は2112年現在では、地球上のほぼすべての高等生物がキャリアとなってウィルスを持つ状態となっており、通常は毒性をほとんど示さず人が死ぬようなことはないが、マイクロ波等の高い周波数の電磁波を浴びると、途端に突然変異で活性化して強烈な毒性を示すのである。  つまり、人間が生きていく生活圏の中で、携帯電話等のマイクロ波の通信、高い周波数のラジオ、テレビ放送、レーダー、その他高い周波数あるいは高出力の電磁波を発生してしまう機器については、2059年の国際条約によって、その使用が一切禁じられており、それを破った者に対しては、その者が世界のどこの国にいようとも、その者がそのときに居る国の政府によって厳しく処罰されることになっている・・・最悪、即刻死刑となる国もあるのだ・・・  そして、ウィルスの持つ放射性蛋白質により、人間は慢性的な放射線障害となり、そのDNAが徐々に破壊されていくのである・・・そして遺伝子異常のため、生まれたときから身体の一部が欠損することが広く一般的に発生しているのである・・・
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