第二章 大海原をゆく船 第二節 神獣島と咆哮岩礁 その1

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──────そのような訳で、当然、無線や携帯電話による通信も禁じられ、マイクロ波を使うレーダーも使用できず、当然、観測衛星等からの電波の発射も強制停止する状態となっているので、観測衛星等による地形の測量はできない・・・のである。  そんな訳で、今、航海士オレージナやパプラ船長が使用しているフォトン海図表示システムやフォトンジャイロシステムは、中の回路がほぼ光ファイバー、光デバイスのみを使用した特殊な装置となっており、大元の電源部分以外に電気が流れることは無いのである。  そして、そんな困難な状況の世界でも、過去の様々なローテク技術の駆使と、高周波や電磁波を使用しない装置の開発によって船舶による交通手段が大きく発展したのである。  当然、飛行機もプロペラ機か、かなり旧式のジェット機のみで、各種コンピュータについても、生物系ニューロコンピュータをベースとした生物プロセッサチップにより、処理速度こそ遅いが、超メタ並列処理によってある程度の計算能力を備えている。    そして、生物プロセッサチップのエネルギー源は、基本的にブドウ糖誘導体、水、二酸化炭素、光エネルギーを元にしたナノミトコンドリア葉緑体が発生する生物エネルギーであり、その駆動原理はミトコンドリア葉緑体電気義手義足と同じである。 ───そして、今、走砂艇ドマーロは、カラブ海に広がる危険な草原海洋に侵入を開始していた─── 「どうだい? 黒番犬の船『ブラック・ラフト』の様子は?」  船の船尾から望遠鏡で後方を見ているブルアン少年に向かって、料理番グリンドーは尋ねた。 「うーん、変わらないね・・・1.5リーグ(約8,300m)くらい離れてピッタリと付いてきているね・・・」  ブルアンの答えにグリンドーはヒョウと口笛を吹いた。 「望遠鏡で見ただけで、おおよその距離を算出できるなんざ、大したもんだよ!坊ちゃん!」 「え?・・・そうかな?」  ブルアンは少しはにかんだ様子を見せた。  今、海は雲は多いが晴れており、波はとても静かであった。
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