第二章 大海原をゆく船 第二節 神獣島と咆哮岩礁 その1

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 そして───あの嵐の騒ぎから、いろいろとあったのだが───人造娼婦(オートプロスティテュート)のヴェルデの再学習は何とかうまくいって、驚くべきことに特別水夫(スペシャルセイラー)として皆に溶け込んでいき・・・なんと、今は・・・超ビキニを着て、甲板にリクライニングチェアを置いて日光浴中であった。  名目は全身のミトコンドリア葉緑体に太陽の光を浴びさせるためであったが、ときおりガラス瓶に入った水をラッパ飲みしていた。  ミトコンドリア葉緑体の薄黄緑の細かいメッシュが張り巡らされた全身であったが、そのスタイルは抜群であり、レッドン達にはいい目の保養になったようで、彼らはヒューッと口笛を吹くなどしていた。 「黒番犬の奴らは十分に距離を開けて・・・こちらがやることを見届けるつもりだな・・・」  船尾でブルアン、グリンドーの横に立つ船医ブラーウが言った。 「そうですな・・・危険なことはこちらに任せて、そのおこぼれを頂戴するんでしょう!」  グリンドーはブラーウの言葉に応じた。 「さて・・・そろそろ、この船も危険水域に入ってきた・・・推進装置を波状無限軌道(ウェーブキャタピラー)に切り替えるぞ」  船尾で語り合う三人の元にパプラ船長が近づいてきてそう告げると、引き続き伝声管に向かって命令を伝えた。 「レッドン機関士! 推進装置を波状無限軌道(ウェーブキャタピラー)へ切り替え開始だ!・・・オレージナ航海士も操縦装置を波状無限軌道(ウェーブキャタピラー)に切り替えてくれ!」 「・・・・アイ・キャプテン!」 「・・・・・・アイ・キャプテン!」  やや同期がずれた形で、機関士と航海士から返答が戻ってきた。  そして、走砂艇ドマーロはいったんエンジンを停止させると、後方のダブルスクリュー、側面のスラスターの吸水口および排水口を閉じ、その代わりに、船の底部から左右2本の長い波状無限軌道(ウェーブキャタピラー)を露出させ、ウェーブを描くように駆動させて少しづつ海草のひしめく海面を進み始めたのであった。
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