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第二章 大海原をゆく船 第二節 神獣島と咆哮岩礁 その2
神獣島に上陸するメンバーについては若干意見の相違があったものの、超精密六分儀と超精密クロノメーターの取り扱いに慣れている航海士のオレージナをメインとして、ブラーウ船医がその補助にあたることになった。
本来は、ブラーウ医師は船医として船に留まるような立場であるが、実は数日前からまたオレージナのミトコンドリア葉緑体電気義足の調子がいまいちで、もしものことを考えてブラーウ船医が同行することになったのである。
なお、測量用の器材、二日分の水、食料や寝袋等を積載すると、小型ホバークラフトに乗れる人数は二人が限度であった。
そして、オレージナとブラーウの二人は6月20日の朝に神獣島に走砂艇ドマーロが1kmまで接近したところから小型ホバークラフトで出発した。
海藻ひしめく草原に隠れて突き出している岩礁の位置が不明のため、ドマーロのこれ以上の島への接近は不可能だったからである。
その後、走砂艇ドマーロは危険な草原海洋を離れ、さらに西に110kmほど航行し、今度はさらに危険な咆哮岩礁付近の海域?へと到達した。
咆哮岩礁付近の海域は、神獣島のある草原海洋よりも更に危険な場所で、海は砂と泥が大量に含まれた潮流が渦巻いており、一度人がその海の中に入れば、流砂潮流の途方もない粘度のため海中に引き込まれて二度と水面?に顔を出すことができないという恐ろしさであった。
ちなみに、なぜ咆哮岩礁という名前がついたかというと、粘度と密度の大きい流砂潮流が巨大岩礁の底部にある貫通穴を通るときに、巨大な海獣が咆哮するような音が聞こえるためである。
そんな訳で、実は今回の船───走砂艇ドマーロは、まさに、この流砂潮流を航行する上で、無くてはならない船だったのである。
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