第二章 大海原をゆく船 第二節 神獣島と咆哮岩礁 その2

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 草原海洋で使用した船の底部左右2本の波状無限軌道(ウェーブキャタピラー)は格納し、代わりにかなり燃料は消費するが、船の甲板のすぐ下から左右2つずつの巨大プロペラジャイロを突き出して船全体をやや浮かせ気味にして、尖った船底によって粘度の高い砂泥海流(さでいかいりゅう)からの摩擦を極力減らして船後部の推進ジャイロプロペラによって航行することができる。  そして───咆哮岩礁(ほうこうがんしょう)に向かうホバークラフトは、神獣島(しんじゅうとう)へ向かった小型ホバークラフトをさらに一回り小型にしたミニホバークラフトだったため、測量用機材、半日分の水、食料を積載し、重量制限から大人二人が厳しく、なおかつパプラ船長は立場として船を離れる訳にはいかず、結局、料理番であるが、ひととおり船を走らせ、測量を行う(すべ)を知っているグリンドーと、子供であるブルアンが補助として同行することになったのである。  グリンドーとブルアンはミニホバークラフトに乗り込み、6月20日の午後遅くに咆哮岩礁(ほうこうがんしょう)に向けて出発した─── ******  話は、6月20日の朝に戻る───  小型ホバークラフトに乗ったオレージナ航海士とブラーウ船医は、海洋草原の危険な岩礁を目視と勘で避けつつ、なんとか神獣島(しんじゅうとう)の海岸にたどり着いた。  もともと島の周囲は1km以上の幅の海藻ひしめく草原で囲まれているため、海岸に打ち寄せる波はとても小さく、ホバークラフトを海岸の砂地に上陸させることに苦労は無かった。  オレージナとブラーウの二人は器材や水食料を降ろすと、それぞれ強化運搬服(オートポーター)を身に着けて重たい荷物を背負い上げた。  オレージナの荷物は20kgほど、ブラーウ船医の荷物は30kgほどであったが、ミトコンドリア葉緑体電気義足の調子が悪いオレージナと、だいぶ年がいっているブラーウ船医(といっても53歳)にとっては大変ありがたい装備で、それぞれ5kg、8kgほどの重さにしか感じられなかった。
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