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第二章 大海原をゆく船 第二節 神獣島と咆哮岩礁 その3
「ああ、ノーナはよくやってくれる有能な助手だよ・・・A級看護医師免許を持っていて、実務経験が10年以上あるから自身で開業することも可能だが・・・いまだに私の助手をやってくれている・・・」
ブラーウ船医は、強化運搬服の自動ミニチェアに座りながら水筒の水を一口飲んだ。
「・・・ノーナさんは独身なんだよね?今、年はいくつ?」
同じく強化運搬服の自動ミニチェアに座りながら、航海士のオレージナも水筒の水をラッパ飲みした。
「開業への推薦書は私が書いたので年齢は知っている・・・確か、今年で33歳になるはずだ」
「ふーん・・・私より7歳年上だけど・・・私も人のことは言えないけど・・・彼女は結婚していないんだよね?」
「ああ、そうだが」
「ブラーウ先生も結婚していないんだよね?今いくつ?」オレージナは更に突っ込んで聞いてきた。
「・・・ああ、私も今年で53歳になるんだがね・・・まぁ、オレージナ、この話はまた頂上に着いたらゆっくり話そうか?」
ブラーウはちょっと疲れたように答えた。
「ふーん、まあ、いいけどね・・・じゃあ、頂上でちゃんと話そう!」
オレージナはそう言うと立ち上がり、また先頭で鉈を振るい始めた。
******
やがて二人は疲労困憊の中、神獣島頂上の死火山の火口にたどり着いた。
火口のすり鉢状のカルデラの直径は200mほどで、火口から中心部までは30mほどの深さがあり、中心部は不透明でエメラルド色の水が溜まった池となっていた。
時刻はすでに夕刻となっており、太陽はかなり西に近い西南西の方角に沈みかけていた。
二人は急いでテントの設営を始め、陽が水平線に没する前に何とか夕飯の支度にまで取り掛かることができた。
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