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「ノーナさんは自分で開業して独立できるンでしょ?」
「ああ、A級看護医師免許で・・・実務経験が10年以上あるからね」
ブラーウもシチューを口に運びながら答えた。
「でも、開業せずに先生のところで働いている・・・言っちゃあなんだけど・・・給与もそんなに高くないよね?」
オレージナはラノム酒の瓶をグビリと飲んだ。
「うむ・・・確かに、一般看護助手と同じくらいの給与で働いてもらっている・・・今度帰ったら、少し額を上げるかな?」
「・・・そんなことを言ってるんじゃないヨ!」
オレージナは少し怒ったように言った。
「アタシ、先生のところで義足を調整してもらったときに・・・そっとノーナさんに聞いたんだ、なんで8年もここに務めてるの?なんで自分の医院を開業しないの?って・・・彼女、ちょっと黙っていたけど・・・先生の助手をすることが私の仕事なんです・・・って言ってた・・・ここまで言えばわかるでしょ?」
「え・・・私はてっきり自身での開業に二の足を踏んでいるものだとばかり思っていたが・・・」
ブラーウは驚いた様子であった。
「・・・まったく!これだから男って・・・にぶいんだから!」
オレージナはあきれたようにため息をついた。
「今回の航海が終わったら・・・先生から伝えることね!」
「・・・そうだな・・・わかった・・・ありがとうオレージナ」
ブラーウはちょっと頭を掻きつつ答えた。
そのあと、二人はシチューとパンを黙って食べ終えた───
「・・・ところでね、先生?」
急に声音を優しく変えたオレージナが言った。
「今夜は二人っきりよ?・・・今までの治療代のお礼をさせて?今後のも含めて」
「え?」と驚くブラーウ。
「ノーナさんには黙っているから・・・あまり、我慢していると体に毒よ?」
オレージナは手足を交互に突きながら、ブラーウに近づいていったのであった───
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