第二章 大海原をゆく船 第一節 破壊工作 その2

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「アタイにも頂戴!」  薄黄緑の手が2本伸びて、おにぎりを2個掴んだ。 「えっ?!」「おっ?!」「あっ!!」「何っ?!」「・・・!」  誰もが口々に叫んだ。  そこに立っていたのは、昨日の夜から、嵐のどさくさ紛れで行方不明になっていた、人造娼婦(オートプロスティテュート)のヴェルデであった。  しかも、いくら人造娼婦(オートプロスティテュート)とはいえ、一糸も纏っていなかったのである! 「アンタねぇ!!」  オレージナがとりあえず自分の腰マントを外し、急いでヴェルデの腰に巻き、そして、上半身には自身の革のベストを脱ぐなり羽織わせた。  しかし、ヴェルデは何故か無頓着のようで、そうされながらも両手に持ったおにぎりを一生懸命パクついていた。    本来、全身がミトコンドリア葉緑体メッシュ組織に覆われている人造娼婦(オートプロスティテュート)は、日光が無いところでは、ブドウ糖誘導体と水だけを摂取することになっており、おにぎりを食べるという行為はできないことではないものの、かなり効率が悪く、体に負担をかけることであった。  通常、一般人が使用しているミトコンドリア葉緑体電気義手や義足に比べると、かなり高級な組織を使っており、ミトコンドリア葉緑体メッシュ組織はかなり細かいメッシュであったが、それでも近くに寄って見ると、ほぼ透明な人工表皮の下5mm辺りの深さに薄黄緑色のメッシュ組織が一面に広がっているため、初めて見る人にとっては、ちょっと不気味なものに見えるかもしれなかった。  しかし、うまくできているもので、個室部屋(ラ・モール)の中のグリーン照明では、それがほぼ完全にわからなくなり、とても綺麗な肌に見えるのである。  蛇足であるが、一般人が使用しているミトコンドリア葉緑体電気義手義足の体組織がなぜ大雑把な構造かというと、部分的な交換や補修といったメンテナンスのし易さがあることも大きな理由である。
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