第二章 大海原をゆく船 第五節 フレイング・デッチマン号 その5

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 ブラーウ医師はそれを聞くと、すぐに二人の元に駆けつけて彼らのシャツの一部を引き裂いてカッパードとスーレーの手首の傷口をふさぎ、ぐるぐると包帯のように巻き付け始めた。  カッパードとスーレーは二人とも妙におとなしく、されるがままになっていた───その様子を見ていたグリンドーは何か妙な違和感を感じたのだが・・・? パプラは息を引き取ったレッドンを静かに横たえると、ブルアン少年に走砂艇ドマーロから荷物梱包用のスーパーハイテンションガムテープと手錠をあるだけを持ってくるように頼んだ───ブルアンはすぐさま渡り板の上を走って行ったが、今、彼はいつも口元を覆っているマスクをはずしており、しかもネズミひげをいっぱいまで伸ばしているので、かなりバランス良く体を動かすことができた。  また、赤外線可視化ゴーグルは、いざというときのためにオレージナに手渡したのである。  グリンドーが先ほど感じた違和感を今度はオレージナが感じ、自身のすぐ後ろにいるグリンドーに耳打ちするようにささやいた。 「ネェ、グリンドー。何か・・・おかしくない?・・・こいつら全員男なんだけど・・・」  今のオレージナは赤外線可視化ゴーグルをしているため、死んでいる者一名、気絶している者八名、死んでいる恐竜男ニ名が全裸であり、しかも全員男であることを確認しつつそう言った。 「確かにそうだな・・・こいつらは長い間、海の上にいるのだろうが・・・女の乗組員が全くいない船というのは聞いたことがない・・・ということは船内のどこかに隠れているのか?・・・オレが船内に潜んでいたときには他に乗組員がいる気配や人影はなかったんだがな?」  グリンドーはそうささやきつつ首を傾げた。
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