第二章 大海原をゆく船 第五節 フレイング・デッチマン号 その6

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「危ねぇ!!」  グリンドーが義手の左手のカニ鋏をオレージナの太ももの間に叩き込む。  鋭いメスはオレージナの右太ももの内側を少し切り裂いたが、メスはそのまま飛ばされ彼女の後方に転がっていった。  そして、グリンドーは見た!  甲板に薄く広がるほぼ透明なスライム状の液体からいきなり人間の手首が形作られ、その手首が落ちていたメスを掴み、すぐさま広がるスライムとともにすばやく移動していく様を! 「スライム状の何かがいるぞっ!!メスを握っている!!」  グリンドーが叫び、彼はスライム状の液体に向かってカニの爪弾丸を一発発射したが、弾丸は甲板の一部をえぐっただけで、特にスライム状のものが飛び散った様子はなかった。  グリンドーの言葉にパプラ船長たちも自分たちの周囲をキョロキョロと見回し警戒するが、周囲にはメスを握った手首などは見当たらなかった。 (こいつは・・・ヤバイぞ!ここで戦うのは不利だ!)  グリンドーは瞬時に判断して叫んだ。 「みんな! ドマーロに一旦引くぞ!」 「待って!グリンドーさん!」  驚いたことにブルアン少年が即座に声をかけ、続けて叫んだ。 「スライム状の何か!・・・僕にはわかるよ!フェルトさんの足元近くだ!」  ブルアン少年は例のネズミのような長いヒゲのセンサーで、わずかに変化をみせた甲板の凹凸を捉えたのであった。  グリンドーはフェルト助役の足元を見る。  わずかだが、甲板の一部が脈打つように動いていた。 (保護色かっ?!)  グリンドーは左手のカニ鋏の弾丸を発射する代わりに、カニ指の先端からマーキング用のグリーン蛍光液をフェルト助役の右足元近くに発射する。  しかも、今度はスライム状のモノが攻撃を避けることを予測して、フェルトの足元からやや離れた位置をねらったのである。  グリーン蛍光液は全部ではなかったが、一部がスライム状のものにかかって混じり合い、その動く痕跡を残した。  それを見たオレージナが素早くピストルで蛍光液あたりを打ち抜き、その直後にパプラもボーガンの矢を放ってスライム状のものをけん制した。 「助けてっ!」  十字架に架けられていた黒番犬の妹のケルガが意識を取り戻したらしく叫ぶ声が聞こえた───
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