第二章 大海原をゆく船 第五節 フレイング・デッチマン号 その7

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「イッヤあああああああ───っ!!!」  全裸の女───人造娼婦(オートプロスティテュート)のヴェルデがフェルト助役にすがりついて絶叫した。  すがりつかれたフェルト助役は思わず傾いて船室に通じるドアにぶつかり、そのまま船室内にヴェルデと共に倒れこんでいった。  グリンドーが彼らの方を見た刹那───先ほどとは違った褐色の手首が鋭いナイフを持っているのが見えたが、手首はすぐにスライム状となりナイフをその体に隠し持ちつつ保護色となって行方をくらました。 「新手か!!」  グリンドーはそう叫ぶとスライム状のものが移動しただろうと思われる行く先の壁に駆け寄り、オレージナの剣で壁と甲板を切り裂いた。 「ぐぎゃああっ!!」  どこからともなく女の悲鳴が聞こえ、グリンドーは剣に何かスライム状のものを切った確かな手ごたえを感じた。 (もしや?!・・・完全に分断すれば再生不可能になるのか?!)  グリンドーはそう思うと同時に、身体がスライム状になってしまった女達に一瞬、深い同情を抱いてしまったのも事実であった。 (RAVV2051の遺伝子異常による身体のメタモルフォーゼなのか?!)  だが───敵の女は、まず動けない者にターゲットを絞ったようだった。  十字架に架けられていた二人の水夫の首筋が一瞬で切断され、鮮血が高く噴き上がる。  しかし、その間にブルアン、パプラ、が十字架の腕のロープを、オレージナが足のロープを切って黒番犬ケルーベと水夫のレンゴンを助けだした。  太り気味のレンゴンは大慌てで尻尾を引きずりながら渡り板へ駆けて行ったが───黒番犬ケルーベは逆にグリンドーが出てきた船内への入り口に飛び込んで行く。 「やめろ!! ケルーベ!!」  グリンドーが叫ぶ。
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