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第二章 大海原をゆく船 第五節 フレイング・デッチマン号 その8
「早く!!ドマーロに戻るんだ! 急げ!!」
料理番グリンドーが叫ぶ声に、船室内に倒れこんでいたフェルト助役と人造娼婦のヴェルデが手を取り合うようにして渡り板を目指す。
甲板をすばやく這って二人に迫るスライム女『ホルア』───手首だけ形を構築し、その手には鋭いナイフが握られている。
目ざとくその姿を補足したブルアンの声に、パプラ船長が特技のボーガンの矢を放つ───矢はスライム女『ホルア』の手を貫き、ナイフがスライムの中に落ち、手もまたスライムへと変化する。
「ぎゃああああーっ!!」
スライム女『ホルア』の不気味な声が響き渡る。
どうやら、スライム女は人間の体の一部を構築したときに受けたダメージが残るようで、少しの間、再び手首を実体化することができないらしい。
「パプラ船長!!船へ!」
グリンドーの声にパプラも踵を返すように渡り板を渡る。
フレイング・デッチマン号に残る味方は、グリンドー、ブルアン、オレージナであるが、オレージナは両膝から下のミトコンドリア葉緑体電気義足が壊れているため自由に動けない。
そのとき───船内に飛び込んでいった黒番犬ケルーベが再び甲板に飛び出して来る───その手には手持ちのガトリング銃があった。
「テェめーらっ!!よくも仲間を殺りやがったナッ!!」
ケルーベがガムテープで手足を縛られている透明な男たちが転がされているあたり、あるいは良くはわからないが、スライム女がいるだろうと思われる甲板などを無差別に撃ちまくる。
「ヤべぇっ!!巻き添えを食うぞ!!」
グリンドーはそう叫ぶと素早く左手のカニ爪のミトコンドリア葉緑体電気義手でオレージナを小脇に抱え、なおかつブルアン少年を怪我を負っている右手で小脇に抱えてダッシュで渡り板を駆けた。
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