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「藤崎ちゃん、ね。ねえ、今度、飲みに行かへん? 串カツのおいしいとこ、教えたる。新世界、行ったことある? 通天閣、昇ったことある?」
「いいえ。是非、連れていってください」
「よし、庶務に誘いにいくわ。待ってて。ほな、また」と、手を挙げて去っていった。
変な笑いが止まらなかった。
支倉課長、と庶務課に戻るために歩きだしながら、心のなかで呼びかけた。
課長、大阪はなかなか大変です。何がって、まず日本語が半分くらいしか聞き取れません。アクセントもですが、スピードが速くて、しかも声が大きいので、最初の三日間は必ず聞き返していました。今日は営業の大倉さんという人と知り合いました。初めて『生・自分』を聞かせてくれた人です。今度『新世界』の串カツを食べに連れていってくれるそうです。『新世界』と聞いて、ドボルジャークですか、と訊きそうになりましたが、どうやら通天閣のあるところらしいです。林部長も行ったのかなと、まだそんなふうに考えてしまいますが、課長が言ってくれたように、わたしは大丈夫だと思います。大阪も面白いところだと感じるようになりましたから。こっちに来たら、すぐにもっと西への異動願いを出そうと計画していたのですが、ひょっとしたらもう少し、ここにいるかもしれません。ここも結構、楽しそうなので。
<了>
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