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3年前に『企画部・商品企画課』に異動になる前から、支倉課長のことは知っていた。おしゃれでイケメンの課長は女性たちのあいだでは有名だが、好みは分かれる。男はもっとワイルドなのがいいとか、やんちゃが魅力とか言う人たちにはあまり人気がない。でも、わたしには『どストライク』だった。
だから異動の辞令が出た時は、夢なら醒めるなと祈った。人生、真面目にやってりゃいいこともあるんだと思った。もちろん、背中を向けて舌を出しながらだったけれど。
いや、仕事は当然、真面目にやってる。やってるから、こうして年中コピー用紙とホッチキスの針の心配をするだけの庶務のおねえちゃんから、退職で女性がひとり抜けた企画部へと抜擢されたんだ。でも私生活はずぶずぶ。なんせわたしが好きになる男は、たいてい既婚者か彼女持ち、そうでなければ典型的なダメ男なんだから。
支倉課長だって既婚者だし。そう思った直後、ふと不安になった。
庶務のおねえちゃんから庶務のおばちゃんへと進んで会社員人生を終えると信じ込んでいたわたしが企画部に異動って、ひょっとして見えない意図が働いている? しかも支倉課長とわたし。一度、確認しなければ、と冷静に考えた。でもとにかく、大好きな上司の下で仕事ができるなんて、わたしは世界一の幸せ者だと思ったものだ。
商品企画課に移って最初の1年間は、もう出勤するのが嬉しくてしかたなくって、毎日遠足に行ける小学生みたいだった。そして機会あるごとに支倉課長の情報を集めてまわった。
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