4章 ラストノート

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という訳で、会長を引き連れ自分の部屋へ戻ってきた。 会長はエアコンのフィルターを開け、軽くちょちょっと分解して、部品をいくつか弄っている。 とても鮮やかな手順だ。 「会長って実は機械に強いメカニック男子だったんですねー」 俺の偏見だけど、物が故障したら真っ先に新しく買い換えるか、部下とか使用人に修理任せてそうなのに。 「ああ、本当は結構こういうの好きなんだ。 両親はあんまりいい顔しないがな…」 ちょっと苦い顔で会長はそう語る。 「俺、部品作る下請けの会社で働きたくて。 1度だけ両親に話してみたら猛反対、そっから機械触れる環境にないんだ。」 "だから、こうやって触れるの楽しくて……" それを聞いて、単純に羨ましいと思った。 キラキラした夢があって、自分のやりたいことがあって。 将来について、進路の話や面談などで聞かれるたび、いつも答えられない俺とは違う。 いまいち、自分が何がしたいのか分からないんだよな… 永遠に大人になれる気がしない。 「夢叶うといいっすね。」 ____________________ 会長のおかげでエアコンは無事、スマートに動きだした。 「ありがとうございますー。会長のおかげで夏が越せるようになりました!」 ぺこりと頭を下げると、 「そのさ、会長って呼び方辞めろよ。」 唐突にそう言われる。 「それは俺ともっと親交を深めたい的なアレですか?」 だったら、まず最初に会長はするべきことがあると思うんだよ。 「まず、自己紹介してくださいよ」 会長の事はそりゃ知ってるけど、本人から名乗られたことないから、何て呼んだらいいかわかんないし(笑) そう言うと、会長はあんぐりと口を開け目を白黒させて驚いた様子。 「そんなこと俺に言ってきたやつ初めてだわ」 苦い顔で少し歪な笑みを浮かべた。
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