彼の正体

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平日は日付の変わる0時で閉店。 帰って行く常連さん達を見送れば 「またね」 あれから将吉さんに見張られて 私とは常に2mは距離を作られていたあいつは 帰り際にそれだけ言って店を出て行った。 閉店後の片付けは、マリンの散歩で免除されてる私は早々に部屋に戻り、ベッドにゴロンと仰向けに寝転がる。 結局この1日 ……あいつ 石井孝典で始まって 石井孝典で終わった気がする。 でも、そのせいか あの人の事を思い出す時間は 鎌倉に来てから一番少なかったかも。 天井を見つめ 何故か浮かぶのは 元カノの名前を聞いて一瞬見せた あいつの曇った顔。 コツン。 ? コツン、コツン。 ……なんの音? 起き上がって耳を澄ます。 コツン。 音がするのは窓……? 閉めてたカーテンを開けたら 窓の向こう側に何かが当たって、コツンと音がした。
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