彼の正体

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窓を恐る恐る、ゆっくりと開けると 下に動く気配を感じて目を向けた。 道路の外灯の弱い灯りの中 笑って手を上げる、あいつ"石井孝典"がいて驚く。 「………何してんの……?」 「明日も朝、海来る?」 「……行くと思う」 「じゃあ、オレも行く」 ……なんで? そんな事言う為に戻って来たの? 私を、遊び相手のひとりに加えたいから……か。 「そんだけ。……じゃ、おやすみ」 「……おやすみ」 あいつは微笑むと歩き出す。 その後ろ姿を見てたら 一度振り返って私を見た。 そして、何も言わずにまた歩いて行く背中 曲がり角にその背中が見えなくなって 窓を閉めた。
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